<注意>
FF14の二次創作です。
2018年のFF14 14時間放送ネタが一部含まれています。
※記載されている会社名・製品名・システム名などは、各社の商標、または登録商標です。
【修正】
・4.xではサンクレッド⇒アルフィノの呼び方に「様」は付かないので訂正。
--- 紅蓮祭2018 (1/2)
とある夏の昼下がり。
「紅蓮祭?」
ヤ・シュトラは首を傾げる。
「そ。コスタ・デル・ソルで始まったんだって。ね、行ってみない?」
リセがテーブルから身を乗り出しヤ・シュトラの眼前に迫る。
「ちょっと、落ち着いてちょうだい」
「いつも忙しくしてるんだし、たまには息抜きも兼ねて!アリゼーも!」
「え、私も?まぁいいけど……」
「そういえば【冒険者】さんとタタルは?」
リセの問いかけにヤ・シュトラが答える。
「二人なら出かけてるわよ。今日は戻って来ないみたいだけど」
「そうなんだ。残念……」
リセはがっかりと肩を落とす。
「紅蓮祭なら泳ぐってことよね……?」
アリゼーが小さくつぶやきながらキョロキョロとあたりを見渡している。
「どうしたの?アリゼー?」
「あ、いた!」
言うなりアリゼーが立ち上がる。
「アルフィノ!本ばっかり読んでないであんたもついてきなさいよ!」
「え?」
突然話を振られたアルフィノは話を呑み込めていないようだ。
「二人がいないなら他のメンバーを誘えば良いのよ」
行動派のアリゼーらしい。真っ先にアルフィノを誘うあたりも彼女らしい。
そんなことを思いながらヤ・シュトラは微笑む。
「良い提案じゃないか。俺も行こう。水着になるんだろ?」
どこからともなくサンクレッドが現れる。
「何よサンクレッド。あなたに見せる水着はないわよ。留守番してなさい」
「それはないぜ……。アルフィノだって男一人よりは俺もいた方が良いだろ?」
「いや、まだ行くとすら言ってないんだけど……」
そんなアルフィノの言葉は誰にも届かず会話は続行する。
「ならパラソル係としてなら同行しても良いわよ」
「なんだその扱い……。まぁいい。一応ウリエンジェにも声をかけてこよう」
「決まりだね!じゃあさっそく用意してコスタ・デル・ソルに行こう!」
「……アルフィノも少しは泳げるようになったみたいだけど、私の方が上ってところ見せてやるんだから」
そんなアリゼーの小さな野望には誰も気付かない。
◆◆◆
@コスタ・デル・ソル
準備を整え、コスタ・デル・ソルに飛んだ一向。
目的地に着くなり目の前に今まで見たことのない建造物がそびえ立っているのが目に入る
建物というよりは足場とか骨組みと呼ぶ方が近いだろうか。そんなものが3つ立っているのだ。中でも3つ目は高さがとてつもない。きっと大富豪のゲゲルジュが金に物を言わせて作ったのだろう。
「何あれ……」
「すごいわね」
リセとアリゼーは口を空けてそれを見上げる。
「凄いな。一番奥のものなんかを参考に暁で簡易な要塞を作れないだろうか」
アルフィノがとんでもないことを口にする。
「タタルが般若になるわよ」
すかさずヤ・シュトラが釘を刺す。
と、そんな会話をしているうちにサンクレッドが合流する。
「皆揃ってるな。あぁ良いじゃないか。まるで碧海に咲き乱れる美s……」
「そういうのはいらないわ」
ピシャリと話を遮るヤ・シュトラ。
「そういえばウリエンジェはどうしたのかしら?」
「誘ったんだが、調べものがあると断られてしまったよ」
サンクレッドは肩をすくめる。
「ここに来る前にウリエンジェが書庫に向かうのを見たわよ」
「そうだね。本を開きながら独り言を言っていたのは私も見たよ」
アリゼーに続きアルフィノも同意する。
となればウリエンジェは不参加、ということになるのだろう。
ウリエンジェの水着姿。長い付き合いになるが未だに見たことはない。
「ねぇサンクレッド。あの大きなのは何なの?」
アリゼーとともに建造物を一通り眺め終わったリセが会話に加わってくる。
「あれが今年の紅蓮祭のメインイベントだそうだ。実行委員は"常夏の魔城"と呼んでいたが、要はあれを登ればクリアということらしい」
事前に情報収集を終えていたらしいサンクレッドが皆に今年のイベント内容を伝える。
「魔城は3つあって、それぞれのゴール地点に実行委員が立っているからそこに着けばゴールだ」
「へー。アタシ向きのイベントだね!」
言うが早いか準備運動を始めるリセ。
「くっ……泳ぎじゃないのは想定外だったわ」
誰にも聞こえない声で呟くアリゼーだったがすぐに元の調子でアルフィノに指を突き付け言う。
「まぁいいわ……アルフィノ!勝負よ!」」
「何が"まぁいい"のか分からないのだけど……」
「いいから!」
「わ、分かったよ」
アリゼーの迫力に押されてたじろぐアルフィノを微笑ましく眺めつつ、リセが口を開く。
「シュトラはどうするの?」
「私は遠慮しておくわ。せっかくパラソル係もいることだしね」
「やれやれ。本気だったのか」
「サンクレッドは参加しないの?」
首を傾げてリセが質問する。
「あぁ。俺も遠慮しておこう。パラソル係とやらも拝命したことだしな」
「もしあなた達の誰かが落ちてケガをしたら回復くらいしてあげるわよ。そんな間抜けはいないと信じたいけどね」
「おいおい、余り若者をいじめるのは良くないぞ」
「何かしら?私が若くないとでも言いたいのかしら?」
「さぁて、パラソルの用意をしてくるか!」
わざとらしく大きな声を出し、その場を立ち去るサンクレッド。
「まったく……」
ヤ・シュトラもその後を追う。
◆◆◆
その場に残ったのはリセ、アルフィノ、アリゼーの3人である。
「二人は勝負するんだよね?」
「えぇ」
「じゃぁアタシは審判しようかな」
「いいの?私たちのことは気にせず楽しんで良いのよ?」
「いいのいいの。二人を見てるのも楽しいからね」
「どういう意味よ……」
アリゼーはちょっと不服そうな表情をするが、こっちの話とリセは笑いながら答えるだけだ。
「私はできれば勝負ではなく純粋に楽しみたいところなんだが」
相変わらずアルフィノは勝負には乗り気ではない。しかしそれでアリゼーが納得する訳もない。そんな二人の様子を見てリセが提案する。
「じゃ、負けた方は恥ずかしい過去を暴露ってことで」
「「え?」」
二人の声がハモる。
「「ちょっと待ってよ/くれ」」
「位置についてー」
リセは二人の声を盛大に無視し、開始の合図を始める。
「クッ……やるしかないのか……」
覚悟を決めたアルフィノの顔付きが変わる。
「よーい」
リセが拳を握る。
「【壊神衝】!」
砂浜に大きな衝撃が走り砂塵が舞い上がる。
それを合図にすかさず走り出すアルフィノ。アリゼーはなぜかその場から動かない。
「【テザー】!」
アルフィノにアリゼーがバインドをかける。
「あ、ずるいぞ!アリゼー!」
動けないまま抗議の声をあげるアルフィノ。
「油断する方が悪いのよ!」
アリゼーはしてやったりと内心舌を出しながらアルフィノを追い抜く。
目指すは最初の魔城だ。
◆◆◆
「元気ね」
ヤ・シュトラは轟音とともに盛大に舞い上がる砂塵の方向に顔を向けながらつぶやく。
「良いことじゃないか。ままならない人生だ。たまには息抜きも必要だろう?」
「そうね。それには同意するわ。でもそういうことを言うなんて……老けたんじゃないかしら。サンクレッド」
「さっきの仕返しか?まぁ俺は23歳じゃないからな」
「うるさいわよ」
魔城付近にパラソルを設置し、レースの様子を見守る二人。
ヤ・シュトラはサンクレッドが持ってきたサングラスを頭に乗せている。
ちなみにこのサングラスは今年の紅蓮祭報酬の一つだ。
「おい、バインドかけるのは反則じゃないのか?」
「ふふ。早速彼女の負けず嫌いが出たわね」
サンクレッドがヤ・シュトラに近づく。
「飲むか?」
サンクレッドが気を利かせて飲み物を持ってきたのだろう。
「えぇ、頂こうかしr」----
サンクレッドが持っていたのはカレーライスだった。
「……」
ヤ・シュトラは一瞬目を丸くした後、半眼でサンクレッドをにらみつける。
「ははは!そんな表情を見たのは久しぶりだな」
サンクレッドが笑う。
「息抜きが必要なのはお前も一緒だろ?」
そう言うと反対側の手でレモネードを手渡してくる。
「……そうね」
少し間を置き小さくつぶやく。
「あなたも、だけど」
サンクレッドは答えない。
しばし沈黙が流れ、ヤ・シュトラもアルフィノとアリゼーのレースの方向に顔を向ける。
「ん?アルフィノがカーバンクル・トパーズを召喚したぞ。どうする気だ?」
二人のいる所までアルフィノの声が聞こえてくる。
「"いけっ!むーたん!すてみタックルだ!"」
「おいやめろ」
〇天堂に怒られる。サンクレッドは頭を抱えるのだった。
◆◆◆
第一の魔城はアルフィノ、アリゼーともに難なく突破しそのまま第二の魔城に突入する。
ここでは差はほとんど縮まらずアリゼーがリードしたままだ。
この第二の魔城では二か所のルート分岐がある。
まず、最初の分岐地点。切れた足場をジャンプして直進するショートカットをするか、それを迂回するかだ。
ショートカットに成功したからと言って大した距離を稼げる訳ではない上にジャンプに失敗して落下すれば第二の魔城を最初からやり直しとなる。リスクに対して得られるメリットはさほど大きくない。
ここでアリゼーに若干の迷いが生じる。リードしているが故に確実に勝ちに行くための慎重策を取るという選択肢を検討せざるを得ないからだ。
一方のアルフィノは勝つためにショートカットを進む以外になく、最初から迷う要素はない。もし万が一アリゼーが落下するなんてことでもあれば確実に迂回ルートで進むかもしれないが。
結局、アリゼー自身の性格として慎重策は合わないと判断しショートカットを行い、ジャンプルートを選択する。
二つ目のルート分岐は細い一本橋ルートか小刻みにショートジャンプをするかのルートだ。これはどちらでも大差ない。得意なルートを選ぶだけだ。
後方のアルフィノはアリゼーと逆のルートを辿るだけである。迷う余地がない分大きく距離を詰めることができた。とはいえバインドで開いた差を縮めるのは容易ではない。第二の魔城を突破した後においてすら以前アリゼーがリードを保ったままであった。
最後の魔城は一本道だ。
分岐ルートもなく足場も狭いため、物理的に後続に追い越されるということはない。
つまり、自分が落ちなければ負けはないと言える。そして、落ちるようなヘマをしない自信もアリゼーにはある。
アリゼーはそのままスピードを殺さずに足場を越えていく。右へ左へ、離れた足場へ。
勿論アルフィノもすぐ後ろを続く。ここまで来ると二人の差はほぼない。
そして、そのまま最後の区画に差し掛かる。
最後の区画は小さな足場を左右交互に何度もジャンプしていくだけだ。難しいギミックは何もない。これに気付いたアリゼーは勝利を確信する。
「この勝負、私の勝ちのようね!」
アリゼーは足場に気を付けながら後ろを振り返り、アルフィノに勝利宣言を行う。
「このままなら、そうだろうね」
アルフィノは頭上に続く最後のコースを見ながら言い返してくる。
このままなら……?
私が気付いたようにアルフィノもこのままでは負けてしまうことに気付いているようだ。
だからこそ勝つ為に何か仕掛けてくるということだろう。
問題はそれが何かということだが、レース開始時にバインドを受けた後の咄嗟の行動がカーバンクルによる捨て身た<検閲>……もとい突進だったのだ。同じようにどこかでカーバンクルを使うしか手がないはずだ。
「いくよ」
アルフィノがカーバンクルを召喚する。
思った通りだ。だが同じ手が通じる私ではない。ジャンプのタイミングにさえ気を付ければ対処は可能だ。
アリゼーは後方からの攻撃に気を付けながら一段目の足場をジャンプし、二段目の左の段差に飛び移る。
一歩遅れてアルフィノが一段目の右の段差に飛び移る。ここではまだ仕掛けてこないようだ。
アリゼーは後ろからの攻撃に警戒しながら体を反転させ、三段目の右の段差に飛び移る。続いてアルフィノが二段目の左の段差に飛ぶ。
仕掛けてくるならそろそろだろうか。
また体を反転させ、四段目の左の段差に飛び移る。
アルフィノも続いて三段目の右の段差に飛び移……らない!
先にカーバンクルが足場の存在しない左方向にジャンプした。そしてわずかに遅れてアルフィノがそれに続く。
「何をするつもり!?」
足場も何もない所に飛んだのだ。そのまま落下するだけである。だが、勝負を捨てそのまま落下したというようには見えなかった。
「吹き飛ばせ!」
鋭い声が響くと同時に真下から突風とともにアルフィノが現れ、そのままアリゼーを追い越し、さらに上方にある段差に着地した。
「そんな!」
アルフィノはカーバンクルの吹き飛ばし効果を自分に浴びせて、アリゼーのいる段差を飛ばして大ジャンプを行ったのだ。
「油断大敵、だよ」
アルフィノは得意げに言い、ゴール地点に通じる最後の段差に飛び移る。
◆◆◆
アルフィノに少し遅れてゴール地点に到着したアリゼー。それを見て、先にゴール地点で待機していたリセが宣言する。
「勝者!アリゼー!」
これに驚いたのはアルフィノではなくアリゼーだった。
「え、なんで!」
「だって、最後のあれは完全に正規ルートを外れてたじゃない?反則負けだよね」
アリゼーはアルフィノを見る。アルフィノに抗議するつもりはないようで、やはりか、というような表情をしている。
しかし、負けず嫌いのアリゼーだ。そんな降って湧いたような勝利には納得しない。
「そんなの……」
「失礼。ちょっと邪魔するぜ」
抗議を続けようとするアリゼーの言葉を遮りサンクレッドが割り込んできた。
「アルフィノ……すまないが某タックルの件でGMから呼び出しだ」
「たいあた……いや、チャージタックルにすべきだったかな……」
遠い目をしながらそう呟くとアルフィノはサンクレッドに連行されていった。
「なんなの……」
アリゼーは困惑しながら一連のやり取りを見つめていた。
その2へ。